「夏の日の 昼寝も何故か 寄り添って」

  あまりの暑さに気分だけでも、とすだれを付けてみた。
  風鈴も付けてみたのだけど風が吹かないので音もしない。
  ああ、でもこれだけ天気がよければ洗濯物はすぐ乾くだろう。
  
  お昼ご飯を食べ終わって、日が一番高く上った頃。
  「新八ー・・・暑いアル・・・」
  神楽ちゃんがバテている。あまりの暑さに今日は外に出ていない。
  まあこんな日差しの中に出て行ったら倒れてしまう。そう思って出るのを
  やめるように声をかけたのは自分だけど。
  定春も玄関のコンクリートのところでぐったりしている。
  でも万事屋の中は外と大して変わらない。。神楽ちゃんは汗だくだ。
  寒いのは何とかしてあげられても、暑いのばかりはどうしようもない。
  「神楽ちゃん、お風呂に入って汗流しておいでよ」
  「うー・・・そうするアル・・・」
  よろよろとお風呂場へ向かった神楽ちゃんのために着替えを出して。
  出てきたらアイスを出してあげよう。確かまだファミリ―パックのアイスが
  残ってる。銀さんには気付かれないように食材にこっそり隠してた筈だ。
  あのひとフツーに置いとくと1日で全部食べるんだよなあ。
  銀さんはこの暑い中パチンコへ行っている。多分店の方が冷房が効いてるんだろう。
  くそ、パチンコ行く金があるんなら給料払え。

  「あがったヨー」
  髪から滴をたらしたまま神楽ちゃんがやってきた。ああ、床が濡れるから。
  でもさっぱりした分少しだけ暑いのが緩和したみたいだ。よかった。
  「ホラ、髪の毛拭いてあげるよ。おいで」
  ソファーに座らせて髪の毛を拭く。神楽ちゃんの髪は細いからちゃんと梳かさないと
  すぐ絡まってしまう。念入りに拭いた後、櫛で梳かしつける。
  「暑いから結ってヨ」
  アイスをかじりながら我が家の姫君が命じる。
  はいはい、仰せのままに。
  いつものおだんごよりは簡単な感じに結ってあげる。
  片方を結い終わった頃、姫君は無言になった。
  どうやら眠くなったらしい。こっくりこっくりと舟をこぎ始めた。
  その幼い様子が可愛い。夏のお風呂上りってけだるくて眠くなるんだよね。
  「神楽ちゃん、お昼寝する?」
  「子供扱いすんなヨ」
  「まあまあ、和室の方が涼しいからそっちに行こうよ」

 和室―銀さんの寝室―が一番風通しが良くて、万事屋の中じゃマシな方だ。(多分一番涼しいのは玄関のコンクリートだろうけど)
 神楽ちゃんと和室に行くと、やっぱり眠気に勝てないのか、素直に横になった。タオルケットをかけてあげて、かるく団扇で扇いであげる。
 ぽん、ぽん、といったリズムで軽くおなかを叩いてあげたら、すぐに寝息を立て始めた。
 夜寝れなくなったりしないかな。まあここ数日暑さでちゃんと寝れてないだろうから平気かな。
 ・・・・・・なんだか自分も眠くなって、暑いとかわいそうだから神楽ちゃんと少し間を空けて、自分も横になる。
 ・・・夕ご飯は冷し中華にでもしようかな。さっぱりしたのが食べたいよな・・・。
 そんなことを考えながら目を閉じた。

 
 「オーイ、帰ってきたぞォー」
 ・・・居間からの声は無し。・・・何だよ、お帰りくらい言ってくれてもいいんじゃね?玄関で爆睡している定春をまたいで居間へ向かう。
 にしてもあっちいなこの家。軽くサウナじゃん。いい汗かけんじゃん。・・・つかあいつらどうしたよ。まさか干からびてんじゃねえだろうな。
 ふと開け放してある和室を見ると、いた。
 このクソ暑い中、新八に神楽が抱きついて寝ている。お前ら暑くないの?
 しかし本人達はすかーすかー気持ちよさそうに寝息を立てている。
 ・・・見てたらなんか銀さんも眠くなっちゃったよ。
 暑いかな、とは思ったけど新八を神楽に独占されるのが嫌で、新八の隣りに寝転んだ。

 ちりりん。風が出てきたようで、風鈴が涼しげな音を鳴らすのが聞こえた。